トラベル&コンダクターカレッジは旅行業界に有為な人材輩出を目的とする単科カレッジです。

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業界展望INDUSTRY OUTLOOK

目次

1:旅行業の歴史
2:旅行業の現状
3:今後の旅行業

注:他のサイト等では「旅行代理店」という言葉が多々使用されていますがこの「旅行代理店」という業態は旅行業には存在しません。旅行業は旅行業法によると「旅行業」と「旅行業者代理業」の二つの種別からなります。さらに「旅行業」はその業務の範囲から「第一種・第二種・第三種・地域限定」に分けられています。本欄ではつとめて正確な文言を使用していますのでご了解をお願い致します。

1:旅行業の歴史

 現在の様な形の旅行業が現れたのは明治38年(1905年)の滋賀県草津から長野県善光寺までの団体旅行を主催(国鉄との共催)した南陽軒(駅前のお弁当屋さん/現在の日本旅行の前身です)がその嚆矢だと言われています。JTBが日本の旅行会社の最初だと言われていますが実はこれも間違いではありません。JTBは1893年当時の財界の大立者、渋沢栄一らによって設立されました。しかし同社(貴賓会)は外国人誘致のための会社であり日本人のための会社ではありませんでした。いまで言うところの”インバウンド”を扱う会社でした。歴史つづき
 海外の旅行業に目を転じますとやはりヨーロッパの旅行業界が長い歴史を誇っています、イギリスのロバート・スマートが世界で初めて汽船の代理業を行ったのが1822年だといいます。しかしこれよりも少々時期を後にしますが近代旅行業の祖と呼ばれるトーマスクックの存在を抜きには語れません。イギリス中部レスターの教会に勤めていた彼は「禁酒大会」の参加者のためにレスター~フラバラ間12マイル(19キロ)を一人1シリングで今で言うところの募集型企画旅行を行いました。往復の鉄道をミッドランド鉄道と交渉、団体割引を引き出したといいます。これが世界最初の企画旅行であり、団体割引旅行であるといえます。その後彼はロンドン万博・パリ万博で会社の礎を築き今の「トーマスクック社」があります。現在「トーマスクック社」は本社はドイツ、ヨーロッパで二番目に大きな旅行会社です(NO1はTUI社)。

2:旅行業の現状

1)

現在(2016年4月)第一種旅行業(業態については参照)708社・第二種2.827社・第三種5.668社・地域限定117社・旅行業者代理業者779社、合計10.099社を数えます。業界の規模はダントツJTBはここ何十年も変わりませんが二位以下は目まぐるしく変化しています。以下平成27年~28年3月の売上高(取扱高)です。(注:各社とも決算月等も異なりますのでこの売上高だけで判断はできませんが一応の目安にはなると思います/観光庁資料より)単位・億円
会社名 海外旅行 外国人旅行 国内旅行 合計 前年比(%)
*(株)JTB(15社合計) 4.336 749 10.746 15.832 104.9
**KNT(株)(9社合計) 1.441 153 3.497 5.092 99.0
(株)日本旅行 1.205 310 2.761 4.277 101.9
(株)阪急交通社 1.625 21 1.306 2.953 88.8
(株)H・I・S 3.451 240 593 4.284 98.8
(株)JTBワールドバケーションズ 2.206 0 0 2.206 89.7
ANAセールス(株) 221 21 1.807 2.049 97.5
トップツアー(株) 337 62 1.080 1.480 99.9
**クラブツーリズム(株) 530 5 1.178 1.714 100.4
日本通運(株) 371 9 74 455 92.1
名鉄観光サービス(株) 130 14 749 894 100.1
(株)農協観光 86 18 663 768 101.3
(株)ジャルパック 563 0 1231 1.795 103.4
(株)読売旅行 80 0 436 517 97.4
(株)JR東海ツアーズ 15 3 969 989 103.1
★楽天トラベル 156 77 4.651 4.885 123.3
*JTB14社((株)JTB・(株)JTB首都圏・(株)JTB西日本・(株)JTB中部・(株)JTB九州・(株)JTB法人東京・(株)JTB中国四国・(株)i,JTB・(株)JTB東北・(株)JTB北海道・(株)JTB関東・(株)JTB関西・(株)JTB東海・(株)JTBグローバルマーケティング&トラベル。
**(株)KNTとクラブツーリズム(株)は2013年1月1日合併

2)

上記のように旅行業界の規模は売上高で見るとこのようになります。売上高の中身を吟味していくといろいろ面白いことが解ります。JTBのダントツは致し方ないところですが、実はこのJTBの売上には少々裏がありまして、この売上の中には他社(ほかの旅行会社)に代売(受託契約といいます/例えば小田急トラベルでJTBのパックを売っていますよね?パックツアーの売上についてはそのツアーを実施している会社つまり作っている会社の売上に計上します)も含めています。つまりJTB本体だけでなく、他の旅行会社に売ってもらっている分も含まれているわけです。その分が数十%とも言われています。旅行業界のガリバー。 

1.
海外旅行の取扱高でみるとHISが2位にきます。数年前になりますが取扱人員がHISがJTBを抜いたと話題になりました。HISは海外旅行の総取り扱い人員ではJTBの上を行くのではないかと言われています。

2.
KNTはご存知のように近畿日本鉄道が親会社ですがここ数年業績は振るいません。もう数期続けて赤字を継続しています。昨年は赤字回避のためにとうとう秋葉原の本社をIT企業に売却しなんとか黒字を確保したほどです。これに業を煮やしたのか親会社の命令一下2013年1月をもってクラブツーリズム(株)(CT)と合併、大幅な組織改正(改悪?)がなされます。組織改正をしたから売り上げが上がるというわけではありませんがどうもこの会社は組織改正という名の改悪が大好きなようです。CTは元々KNTの渋谷営業所だったことはよく知られていますが一度手放し又吸収・・・この節操のなさと先を読む経営者の手腕のなさが今の惨状を物語っています。昔のKNT今何処??

3.
(株)日本旅行は言わずとしれた親方日の丸(今はこういう言い方はしません?)JR西日本が親会社です。強力なJR網を武器に今後も地味にやっていくでしょう。

4.
(株)阪急交通社は最近の躍進が際立っています。かっては地味な存在でしたがCTの手法をそのまま取り入れて(まあ真似っこですが・・)トラピックスのブランド名(旅行商品の愛称をわが業界ではブランド名と言います)で関西のみならず関東をも席巻、顧客層を絞って(熟年層が主なターゲット)ここ数年取扱高を伸ばしています。しかし一昨年からの経営方針の変更によるものか2014,2015年は売り上げが激減しています。

5.
HISについては今更述べることはありません。確かにかっては業界の異端児と言われ、悪口罵詈雑言の嵐でした。でもそれも他業者を尻目にHISのみ業績を伸ばし続けたものですから、やっかみが半分以上、最近は実力通りの評価を受けています。正直素晴らしい会社だと思います。沢田会長のカリスマ性に加え若き社長の実力は目を見張るものがあります。もうJTBを抜いてNO1企業と言っても過言ではないと思います。

6.
JTBワールドバケーションズはルックJTB(JTBの海外募集型企画旅行のメインブランドです)を作っている会社です。この会社はルックJTBを作ってJTBはじめ各旅行会社に卸販売をしています。ルックJTBはかってはルックという名前でJTBと日通旅行で共同開発しました。そしてルックJTBとルックワールド(日通のこの商品今はどうしてしまったのでしょうか?)に分裂・・今はルックと言えばJTBと誰もが思っています。嗚呼・・

7.
トップツアーの名前をあまり聞かなくなって久しいような気がします。東急観光と名乗っていた頃が懐かしい・・。

8.
やはりこのクラブツーリズム(株)(CT)には相当行を割かないわけにはいきません。CTの前身は前述のようにKNTの渋谷営業所でした。当時渋谷営業所に赴任した所長高橋秀夫氏は年金受給者にもっと安価で年に数回行ける旅行をと提案(これが今の中高年層・熟年層への旅行販売のもとになっています)日帰り旅行の「びっくりバス」の販売を開始しました。これがその後の営業所の方向づけをします。やがて折込広告(アイデム)を利用しての集客、そして今の旅行雑誌「旅の友」の原型である月刊誌「旅の友ニュース」の創刊(1983年)へと続きます。今の形のメディア(新聞広告等)を利用した旅行販売(通信販売)が完成しつつあったのがこの頃です。新聞広告→顧客の反応を名簿化→DM(最初はチラシやがて旅行雑誌「旅の友(現在首都圏だけで300万部以上発行とか)」)による集客、この流れを作りました。またその「旅の友」は旅行者の核となる人たちによる宅配というそれまでに無い画期的な方法を取りました(勿論これにも顧客の組織化等を目指す高橋氏の狙いがありました)。現在もこの「宅配」法は当時とあまり変わっていません。当時はKNT内部でもその是非・手法をめぐり侃侃諤諤特に所謂団体屋(私達は親しみを込めてこう呼びます。この人たちがそれまでのKNTを支えてきました)と称する支店長連にはすこぶる評判が悪かったようです。団体支店の営業マンが10万円で売っている沖縄旅行が39.800円・・。勿論この販売価格の裏付け(それまでKNTの協定に漏れていた旅館・バス会社等をCTのパートナーズとして新たに契約,クラブ形式での顧客の囲い込み等)はあるのですが当時はなかなか理解されませんでした。そのため高橋氏の渋谷支店はKNT本体に反旗を翻したような形になりました。これがやがてクラブツーリズム事業部そして(株)クラブツーリズムへと継っていきます。高橋氏も去り2013年1月からはCTも新KNTとして生まれ変わります。今後が注目されますが・・・。

9.
日本通運も2012年10月旅行部門を「日通旅行(株)」として独立させました。社員のリストラをはじめとした大幅な組織改正で、さてどこまで日通が蘇るか興味あるところです。

10.
ジャルパックと言えばかっては一世を風靡したものですが日本航空の凋落と共に一時はその存在さえも危うくなったほどです。幸いJALは業績急回復、ジャルパックもジャルツアーズと合併し国内・海外の募集型企画旅行の卸会社としてやっていくようです。日本航空も鶴丸が復活!アイル・アバからジャルパックのブランド名に変更!やはり昔の名前がいいですね。

11.
JR東海ツアーズはJR東海とJTBの共同出資会社ですが最近はやはりというか当たり前というかJR東海の力が勝り国内それも新幹線を利用したツアー販売に舵を切ってきました。前はあんなに海外旅行もそれも質の良い海外旅行を作っていたんですけどね・・。

12.
さて殿(しんがり)に控しは・・・楽天トラベルですよね・・・伸び率すごいですよね・・。楽天トラベルがそのサービスを開始したのは2001年3月でした。その後2003年日立造船の子会社だった「旅の窓口」を買収ほぼ現在の形になりました。「旅の窓口」は船会社の日立造船の子会社として1996年に他社に先駆けITを利用した予約サイトとして誕生、2000年代に入るとシェアでトップを誇りました。まあ紆余曲折を経て楽天トラベルの買収に応じたわけですが当初「旅の窓口」はJTBに話を持っていったそうです。結局買収価格と当時のJTBのトップの理解が得られず仕方なく楽天の買収に応じたといいます。楽天の三木谷氏は当時旅行部門の業績が振るわなかったためか二つ返事で飛びついたそうです。その時に三木谷氏曰く「10年経ったらJTB!」・・・。うう・・・・んその通りになりそう・・。買収額は320億円・・、今思えば安い買い物でしたね楽天さん!それにしてもJTBは大魚を・・。まあ何れにしろここが台風の目になることは間違いありません(もうなってますかね!)表をご覧のとおり国内旅行部門においてはJTBの次に位置してます。この大部分はホテル・旅館の単品勝負なのですが、当然今後はツアーをそして本格的に海外旅行に乗り出してくるとなると・・リアルエージェントを経験してきた私としてはなにか背筋がぞっつとするような・・・。

3)

旅行業界の規模を図るのはこの売上高と社員数ですが、社員数についてはこの売上高表から推測できます。つまり通常この業界は社員一人あたり取扱高1億円と言われています。すなわちJTBは社員数約13.000名・HISは同3.500名と思えば間違いありません(但しIT専門の楽天トラベルは300人、この辺の凄さがWEBの業界ですね)。しかしどこの業界も同じですが売上高イコール業績が良いとはいかないのは我が旅行業界もまた然りです。旅行業界は上場企業が少ないため経常利益等は不明の会社が多いのですが、この業界は良い会社で総取扱高の1.5%程度が経常利益、純利はその半分程度でしょうか。

3:今後の旅行業

楽天の覇権なるか??
今後の旅行業界となりますと・・各社とも暗中模索・五里夢中といったところ・・・。リアル店舗をもつ旅行会社は家賃と人件費に苦しみ、さりとて今更WEBに移行しようにも先行する楽天・じゃらんには遠く及ばず・・。今になって思い出すのはクラブツーリズム(CT)の高橋社長がKNTの社長として復帰したときに「リアル店舗の廃止、KNTは通販に!」と高らかに宣言・・、嗚呼あの時がKNTの大転換期だったのでは・・・。あの時は当時の部課長連の支持が得られずそれが今のKNTの凋落につながっているのですね。今更CTと合併してもコノ会社のこの古い体質を変えなければなにをやってもダメだと思っているのは私だけでしょうか?リアル店舗を抱えている会社で生き残れるのはHISだけか??!!JTBはじめ他社が店舗を縮小統合している中でここだけは国内外に出店を展開中!海外もただ今200支店超・・。うーーん・・。
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